short story夢の続

ショートショート(A short short story by Gen SAKIMORI)

 夢の続きは…

佐奇森 幻


 昨夜は奇妙な夢を見た。ま、奇妙というのか、私の肉体が夢の中で回春したともいうべきかもしれない。早い話がエッチな夢を見たというべきなのだが、この年になると人様の前で大っぴらにできる話ではない。それで回春という表現で言葉を濁したのだが、齢七十過ぎになろうとしている私自身の肉体は、老齢に加えて医師の診断で大きな手術を行い、今は見る影もないほどやせ細り、鏡で見る限り精神的にも肉体的にも昔の面影はどこにもない。だからそんな夢を見るとは思いもしなかったのである。

 定年を過ぎてから夢によく出てくるのは、あわただしく職場で仕事をしている自分とか、かつての上役とか同僚のことである。そして夢から覚めると、我に返り当時のことを振り返り感慨にふける。もちろん時には妻のことや家族のことも、古いアルバムのように現れる。
 ある書物によれば犬や猫も夢を見るとのことだが、時として荒唐無稽な夢に、脳のどこでそんなあらすじが組み立てられるのか不思議といえば不思議だ。
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 話は横道にそれたが、回春というか、エッチな夢のストオリーはこうだった。何か教室見たいな部屋の中で司会者から大勢の若者の前で生き方について講演を頼まれていた。スピーチする人が次々現れ、なかなか私の順番が来なかった。テーマを考え、何を話そうか考えていたら、突然指名されて話すことになった。何を話したかは記憶に残っていないが、たぶん仕事について熱弁をふるっていたように思う。いろいろな視線を感じながら話しているうちに一人の若い女性が私の目にとまった。今でも覚えているくらいだから、かなり個性の強い印象だったと思う。その若いミニスカートの彼女が突然私の目の前で、床に大股広げて腰をおろした。当然ショーツも丸見えである。こんなことを具体的に描く必要はないのだが、持ち前のリアリズムが、私の理性を超えて働く。ただショーツの色が何色だったか、残念ながら失念している。夢での出来事だから展開は早い。その彼女が今度は着物姿で、ドアを開け、微笑みながら私を見ている。私の願望がそうさせるのか、着物の前がはだけ、白い肌に豊かな乳房をもろに見せていた…。

 あれから半年過ぎても覚えているくらいだから、あの時の夢が強烈な印象であったことは間違いない。老いてますますという表現はあるが、私には当てはまらない。ますます増えたのは薬の量ぐらいだろう。その上で診察に行くたびに医師に言われることは、毎日規則ただしい運動をすることを日課としなさいということだった。散歩程度の運動かと思ったら、老齢者にはプール歩きがお勧めですと言われた。
 
 それからしばらくして、妻と一緒に近くにプールのあるスポーツジムに通うことになった。そのせいか日頃億劫なたちい振る舞いが気にならなくなった。少しは体力が付いてきたのだろう。以前はがりがりだった肉体も少しはふっくらとしてきたように思う。それは体重計にも表れていた。その反面、妻からよく注意されるのは、忘れ物がよくあるとのことだった。私自身自覚していることは、瞬間的に自分の行った行動を忘れてしまうことだった。認知症という病名も考え、それはどこに起因しているのか、医師に相談すればいいのだが、つい大病した時の手術を思い出し、言いそびれてしまっていた。
 
 そんなある日のことだった。いつものようにスポーツジムに行き更衣室で洋服を水着に着替えてプールに行ったときのことだった。一瞬目を疑った。水着姿の女性の中に、忘れもしない夢の中で見た彼女がいたことだった。そんな馬鹿なこんなことが現実にあるだろうかと確かめるため近づいて行った。
 そのとき私は気付かなかったが、周りからざわめきと小さな悲鳴が起きていたことを…。妻が何かを叫び、手に布切れをもって私に近づいてくる。このざわめきは何だ、みんなが私を注目している。夢の中で見た光景と同じだった。ただ違っていたのは、私が海水パンツを身につけていないことだった。



スペース滝
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by spaceTAKI | 2015-01-21 09:21 | ■文筆 | Comments(0)