カテゴリ: 小さな喫茶店の詩.佐奇森幻( 14 )

「小さな喫茶店」の詩/15  
A poem at ”A little cafe" No15.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustration by Mushid

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お客
The visitor
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 旅人にとって仕事の休みの日は

 知らない土地のあちこちで お客となる

 歴史を訪ねてもお客様

 食事をしていてもお客様

 休みの日 僕の名前はお客様

 小さな喫茶店もお客を待っている

 僕も がらんとした部屋だけど

 君をお客として迎えたい


[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

B 悪くない詩だと思います。8行のうちに6回「お客」が出て来る。最後のオチで、なーんだまた片想いかと不満も出ようが、これがテーマですから。

A スペース滝は5月に向け「小品展」の準備を始めてるんでしょう?”お客”は来るかしら。
ー どうでしょう。少しは名が知られて来たとは思いますが、それは逆に何かのレッテルが貼られて広まると言う事で、物珍しさのお客から固定客のみに替わる危惧もあり、何とも…。

B 詩人は単身赴任の一時滞在者ですから、お客さま気分から抜け出せない。でも喫茶店の女性にはある種の実感を抱いていて本気で好意を持っている。「がらんとした部屋」の空気をそのリアリテで埋めたい。部屋は心そのものですね。
A 実は私たち自身が全て旅人な訳で、いずれこの世界から別へと還るお客様。きょうのは重いものが根にあります。

B わたしは「その人のレヴェルでモノが見える」と言う言葉が好きですが、詩に代表される削ぎ落としの短文学は、まさにそれで解釈が異なる典型的な芸術と言えます。生きているという充実と、漠然としたその虚しさが同居する”生”そのものにまで言及してみせるAさんはさすがです。

A うん?おぬし、また何ぞ隠し事でもしてるんじゃないよね、おべんちゃらなどたれおって。
ー それはないと思いますよ、私もさすがと感心しました。

A アホか、何でこう男ちゅうもんは単純なんだろうねえ。照れ隠しに決まってるでしょうが。
男二人 そ、そんなん分かってますよ!
A ふーん、なるほど。とすると、なに、それほどあたいが怖いのかえ?
男二人 ……(こわいーのです!)。
  (対談おわり)

スペース滝 nkt@yacht.ocn.ne.jp
925-0005 石川県羽咋市滝町レ99-88  TEL&FAX 0767-23-4401


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「小さな喫茶店」の詩/14 
A poem at ”A little cafe" No14
.(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)

Illustration by Mushid N.


コーヒーつう
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI

 つうの方は何でも知っている

 コーヒーには

 モカとか

 ブラジル

 ブルーマウンテン

 もし

 君のことを知っているつうの方がいたら

 どんな辺地でも

 僕は訪ねていくだろう

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[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

ー 歳の暮れ、連休とは言えそわそわした季節となりました。
A 今年最後の読後座談会に滝町まで呼んで頂きました。
B スペース滝はお休みなんですねえ、大戸が閉まったきりのようです。
ー 戸は木製で只でさえ重いのにこの季節は湿気で完全に固まってまして動きません。常設作品をご覧になりたい方は、大戸前にぶら下がっているヒモを引いて鐘を鳴らせば、のそのそ館長が出て来て中に入れてくれますが。

A さっきまで太陽が覗いていて、子供たちの声がして波止場で遊んでました。もう今は雨風ですが。
ー 今日は連休初日で、お隣のカフェでは忘年会をやってまして、そのお子さん達です。冬は海も荒れますし季節風もあり「スペース滝」は完全なオフシーズンですね。
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B こうしてコタツに入ってのおしゃべりも良いもんですね。今日の詩は喫茶店らしいテーマ。短いのでよけい思いが凝縮されて、良く気持ちが伝わって来ます。コタツの上のはインスタント・コーヒーでちょっと残念ですが。
A お隣が貸し切りならしかたありませんよ。この辺はお店って他にあるのですか。

ー すぐ東隣は”魚屋さん”です。お菓子や野菜なども置いてある。道路突き当たりに白い喫茶店「ジェット」さん、船溜まり奥のに出来た「滝みなと汐風市場」はずっと休業してます。
B 国道からここの臨港道に入る信号交差点角にファミリーマートがありました。ちょっと離れているけど。
ー 国道のもっと手前、一ノ宮には「すしべん」「まぐろ寿司」があります。ま、そんなとこです。

A 今日の詩はとりたてて言う事もないし、Bさんの感想と私も同じです。でも、恋というのはおかしなモンですよね、この詩のように、盲目か、あばたえくぼ、それともタデ食い虫、何と言われようが自分の思いが優先する。種の保存のメカニズムに過ぎないものが文学の永遠のデーマになって生命の重みを知らしめる。
B そうですねえ、幾つになっても…。

A あら、もう枯れてらっしゃるのかとばっかり思ってましたわ。相手は誰です?白状なさい!
B あ、いええ。一般論、いっぱんろんですーう。
A 怪しいなあ。絶対つきとめやるからねっ。私は奥さんの味方よ、忘れるんじゃないわよ。
B はい〜っ。
ー う、えーとう。本日はありがとうございました(汗)。おミカンでもどうです?
 (対談おわり)

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「小さな喫茶店」の詩/13
A poem at ”A little cafe" No13.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
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Illustration by Mushid NAKATA.


根っ子
The root.
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 小さな喫茶店のテーブルに

 今日も花が置いてある

 花音痴な僕でも バラの花ぐらいは判る

 このバラにも根っ子があって

 どこかの土地で咲いていた

 喫茶店にも もう一つの花が咲いていて

 僕の心を乱すのだけれど

 僕は花職人のように

 根っ子を切り取る勇気がない


[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

ー ひどい雨続きでしたがやっと夏らしい陽が射すようになりました。
A 本当に乱暴な気候変動が起きるようになって、温帯でなく亜熱帯のよう。
B 今年はまだ聞きませんが、釣りで見た事もない南方系の魚が掛かることがある。毒があることも多くて釣り人泣かせです。

A そこへ行くと、きょうの詩は気の毒なほど毒のない…根性もない…。
B でも、これは正しいでしょう。いわば単身赴任地でのちょいとした出来心。いつだか「自分がだれだ判からなくなっている」という句でしめくくった詩がありましたが、今日のは理性が語っていますね。

ー このシリーズの8回目「歳」という詩です。
A ああ、あの詩。笑ったわねえ。あれと比べると冷静。目の前の花を見てスーッと出来た感じ。

B 花がバラというのがどうもいけません。全体をバタ臭いというか、落ち着きのない派手な詩にしている。ここは嘘でもいいから、白百合かカサブランカか…しっとりいって欲しかったなあ。
A どっちでもいいんじゃない?バラだと西洋かぶれの乙女チックで、ミーハーの感じが出てて、あらこんな女で良かったのね、と作者の好みが割れるけど、ま、もともとそんな詩集なんだから。
B そうですねえ、どの詩からもそんな印象を受けてしまう。良し悪しは別にして一貫してる。

A 私はむしろ「花職人」が気になるわ。素直に「花屋」にした方がバラと相性がいでしょう。
B なるほど、私が百合を連想したのは「職人」という語感からかも知れない。

A この詩集はどのみち片思いの単身赴任の哀感を、小さな喫茶の女店員に託して詠ってるので、同じテーマを毎回どう料理するかに尽きるでしょうね。登場人物も舞台も限られた中で、こうして尽きる事なく詩が生まれるのは正に恋心でしょうし、恋する人は時に詩人になるのだと思いますね。次が楽しみです。
B Aさん。今日はしおらしく毒舌のないまともな感想ですね。
A あら、つい本性が出てしまいました、ほほほっ。

ー 本日はありがとうございました。
  (対談おわり)


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「小さな喫茶店」の詩/12 
A poem at ”A little cafe" No12.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustration by Mushid N.

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考える人
A thinker.
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 小さな喫茶店のドアを開けるまでは

 僕は饒舌家

 いろいろな出来事を語りたくて言葉を操る

 時にはアメリカ人になったり

 時にはフランス人になったり

 でも ドアを開け君の姿を見つけると

 とたんに

 ギリシャ彫刻の

 考える人になってしまう

[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

ー 久しぶりにお集りいただきました。
B ええ、もう詩の対談はすべて終了したんだと思ってました。
A 今日の詩もシンプルですね。
B そうですね。最後「考える人になってしまう」からタイトルを取ってるけれど、この比喩は問題です。
A 「ギリシャ彫刻の」は「ロダンの」と置き換えるべきかしら。それともこのままギリシャでいいのかしら?
B 難しいです。ギリシャの方がいいと思います。ロダンではあまりに凡庸ですし、あの像は独特の強い固定された雰囲気が一般化してますので、沈黙の意味では饒舌に過ぎて使えない。
A 詩にある通り、ギリシャですと白い大理石の冷たさが沈黙に加え作者の孤独感さえ醸し出せますわねえ。
B その意味でこの詩は二つ問題をかかえてしまった。

ー といいますと…?
B 一つは今問題にしている比喩のあいまいさで、もうひとつはギリシャ彫刻の白のイメージというのが、実は人意的、戦略的に作られた偽物で、本来はパルテノンの彫刻も含め派手に彩色されていたものと分かっているからですよ。
ー そうなんですか。となると比喩は失敗してることに…。

A 酷かもしれないけど「アメリカ」「フランス」と畳み掛けギリシャにいくけど、これも常套句的で詩として弱いと思うわ。
B でもリズミカルに軽く流れて行って、最後「考える人」と重く転じるのはいいし、そこでもあえて平凡な比喩で〆ていて、それはそれである種のトーンがあってこの方らしいし、朗読するだんにはいいと思います。

A ま、はっきしいって彫刻の石頭で”考える”なんて落ち、大して考えてないだめ詩ってことですよね?
男性二人 いえ〜っ、そんなこと言ってません。(フーッとため息)
A あら、そ。
 (対談おわり)

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「小さな喫茶店」の詩/11 
A poem at ”A little cafe" No11.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustration by Mushid N.

た ば こ
The smoking.
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


   小さな喫茶店に入り

   腰をかけると すぐたばこを口にする

   ほかではあまり吸わないのだけど

   煙突みたいに 僕の口から煙がモクモク

   よく 話の間合いにたばこが便利と言うけれど

   君に話しかける勇気がなくて

   ただ ただ たばこを吸ってるのは

   多分 もう一人の僕と話しているからなのか

   できるなら

   君との会話で ゆっくりたばこを吸ってみたい
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[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

− 久し振りにお集り頂き、ありがとうございます。
A 館主が退院されたそうそうですね。
− あのご仁はまだ半病人ですね。同じ場所を2度切るとやたら痛いとか。でも死んだ方が楽なんて思うのを前に2回やってるから、今度はぜんぜん楽でさっさと出て来た。で、今は時々お腹が痛むらしい。

B 大丈夫なんですか。
− 時間の問題。早く出たって、ほら、人間みな同じように出来てるわけで、特別ってのじゃない。
B そう、自分は特別すごいんだも、他と比べてだめなんだも、両方がコンプレックスと呼ばれる。人間はみな同じなんだから共感もできるわけで…。
A あら、そうかしら。わたし今日の詩、全然共感しないわ。
B たばこ喫わん人には解らんかもねえ…。

A 語るにおちるだわ。人間みな同じって事はないの。違うの。それでこそ皆、価値がある。違う?患者もいれば医師もいる、看護師もいれば掃除のおばさんもいる。自分は自分、みな自信持って生きていって欲しいの。
B そりゃそうです。最近の若者、就職出来ず自信喪失する人がおおくて気の毒。運良く懸かっても、夜半までこき使われるのですぐ辞める。日本人はどうしたら自信をもてるんだろうか。
− 国の形を一から仕切り直す時が来てると思いますね。

A わたしもそう思うわ。とりあえずは今のままにして、そのうち変えてこうって姿勢はだめ。時間がないでしょう。もしそうしたいんなら、どの道今まで通りは無理なので、今日からの国造りはこんなんにしましょうというヴィジョンが欲しい。つまり若い人が夢を持てて、年寄りが応援するそんな日本に構造を変えなきゃあ。
B 民主に期待したんだけどなあ…。官僚は昔は優秀といわれてたんだけど、今は保身しか考えない人が多いんだねえ。高度成長期、金が全ての国になってそれが身について、いつのまにやらだらだら借金国。

− あのう、詩の方は…?
A それが感想。たばこはもう時代おくれで小道具としての力は無いけど、だからこそ時の流れとか、否応なく追い詰められいく個々人の立場とかを連想するし、今の時代へと深読みもできる。これも文芸の力ってもんよ。
− ?
B ま、そんなところで、お開きにしましょうか?
  (司会、煙にまかれて役うばわれての終了)

  (対談おわり)

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「小さな喫茶店」の詩/10 
A poem at ”A little cafe" No10.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustration by Mushid N.

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コーヒータイム
The time to be café
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 午前10時は僕のコーヒータイム

 そして僕の心に君が現れる

 僕はコーヒーを飲みに行くのだからと

 もう一人の自分に言い聞かせても

 頭の中は君のことだけ


 小さな喫茶店のドアを開け
  
 君がいないのを知り

 寂しい気持ちで

 コーヒータイムを味わう

[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

ーとうとう回を重ねて第10回目に成りました。前回は館主のモノローグでしたが、さて今回のはいかがでしょうか。

A あいも変らずぱっとしない男心の詩ですねえ。
B そうね。でも、人柄が偲ばれて僕は好感を持ちますよ。
A この人、結局は午前中からお昼までここに入りびたってたのね。好きになれないわねえ、こんなタイプ。
B 僕が好きなところは幾つに成っても恋心を抱いているとこ。心をときめかしていてまるで初々しい若者のような…。

A だから、ヘンです。いい歳こいて何が恋心が初々しい?ですか。
B ま、恋でなくとも、老いて心がときめくのは大変によろしい事かと…。
A やたらべたべた女好きなんか、スケベなんか…。
B いえ!単に純粋でかつ健康なんでしょう。心身ともに。

ー あのう…病気持ちで、たくさん病院の薬飲んでるですって…。歳ですから。
AB (なんとなく口元がゆがむが、ふたりとも無言)…。
ー あっ、この詩が出来たのはもそっと若い時のことで。すみません、皆さんのお年も考えずいらぬ事を申しました。
 (しらけムードで終了)

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「小さな喫茶店」の詩/9
A poem at ”A little cafe" No9.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustrator:中田虫人Mushid N.

自転車
A bicycle
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 夜中に

 たばこを買いに行くと

 小さな喫茶店の前に何台も自転車がおいてある

 僕は通り過ぎてたばこを買い

 ふと誰もいない往来をみると

 街灯の中から君が自転車に乗って現れる

 そして無言のまま 僕の心の中を通り過ぎていく


 一月の寒い夜

 淡い期待が幻想となって現れた
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[読後感想ひとりごち]   中田虫人(むしんど)

「自転車が無言で心の中を通り過ぎ」
「幻想となって現れた」
と作者は言う。これは詩の誇張で、幻想したとか妄想したとかと言う意味だろう。

 それが「幻覚」ともなると病的で、またかと思われることになるのだが、私はけっこう幻覚の経験がある。いずれも疾病時で、平素からその癖があるわけではない。
 
数年前の冬、風邪をこじらせ羽咋市内の医院に入院した時、インフルエンザの特効薬「タミフル」を飲んだ。真夜中の廊下で2、3の女性患者が寄り集まっておしゃべりしているのを聞きながらベッドに沈んでいたが、後タミフルの副作用がニュースになって、幻聴だったと確信するようになった。あの日病棟に自分以外の人が居なかったようだ。

今回の入院の後は普通に幻覚(と言っても寝ぼけと紙一重)を何度も経験した。最も頻繁に見たのは天井の虫食いボードの”星座風模様”。虫食い穴が組み合わさって女性やじじいや子ども、犬などの絵柄に見える。医師は腹の中が火傷したようなもので幻覚は当然だと言う。回復に従い、虫食いにしか見えなくなり、淋しく思った。

最近のは、暗闇で天井を見ていた早朝、板の節目が見る先々で小さな黒いサワガニに変化するので、ああ幻覚だと楽しんだ後、明かりをつけたら、天井板はもっと上方にあり、しかも板張り方向が違っていておどろいた。夢にしてはえらくリアルで意識がハッキリしていたが…。

これとは逆に、皆からそれは幻覚だろうと言われていたことが、後で事実だと分かったことも何度かあった。

「般若心経」の「色即是空」は有名(「空即是色」とつづくが、スリランカのお坊さんアルボムッレ・スマナサーラさんは、これは調子を合わせるべく後世誰かがつけたしたもので怪しいと書いている)。ともあれ、仏教ではこの世は空。で、多分現実の人間の認識も脳のシュミレーションとして外界の刺激を象(かたど)ってみたに過ぎず、量子力学的世界観からは人間が疑いようもないア・プリオリな実体とは違う世界が実は「実体」の”実体”のようなのである。

私はいつものように例の化け物じみたデッサンを描きながらよく想うのだ。実体は仮(け)で、仮のうちにこそ実体を見みており、虚構が深い意味を持つのだ…と 。

(イラスト:当館の海側に咲く水仙と、入院中描いたデッサンのPCコラージュ)

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「小さな喫茶店」の詩/8 
A poem at ”A little cafe" No8.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustratation by Mushid N.


The age
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 小さな喫茶店のドアを開けるとき

 僕は自分の歳をポケットに入れる

 そして僕は旅人だから

 故郷の生活もポケットに入れる

 誰が見ても中年のおじさんなのに

 心のメイキャップしている自分

 君からは

 歳も故郷の生活も聞かれもしないのに

 自分勝手にしまい込み

 自分がだれだか判らなくなっている
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[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

ー さて、単身赴任の詩も佳境にさしかかった感がありますが…。
A ほほほっ、あら、ごめんなさい、でもね、何と言うか、面白い詩ねえ。
B 最後の一行が効いてます。混乱してるのが手に取るように分かる。

A この方 大丈夫でしょうねえ。
— え?なにが。
A だってもう、限界なんじゃないの。
B それは誤解です。「自分がだれだか判らなく…」は一見直裁だが、やたらポケットに隠して自己証明できなくなってる自分自身と、恋で盲目になってる心を掛けた表現。複雑な心境をうまく表現しきっている。

A でも、ほほほっ、わらちゃうわね、やっぱし。浮気心を詩にするなんてへん。小説にでもしたら?
B とか言いながら、けっこう楽しんでる。
A あら、ほんと。滑稽なんだけど、面白い…ほほほっ。
— (笑い過ぎじゃ)そ、それではこの辺でお開きに。
  (対談おわり)

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「小さな喫茶店」の詩/7 
A poem at ”A little cafe" No7.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustration by Mushid N.

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My position
   
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 何時ものように

 小さな喫茶店のドアを開け

 かすれた声でコーヒーを頼み

 自分の席を探すのだけど

 心の揺れが現れて

 どこに座っていいのか迷ってしまう

 本当は君が見える席が一番良いのに

 なぜだか一番隅っこに腰をかけ

 ほぞをかみながらコーヒーを飲む

 ふがいない自分



[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

ー 何だか感想を聞きにくいような…
B でしょうねえ。これって詩かなあ…、告白日記みたい。

ー Aさんのご感想は?
A …。
B 聞くまでもない、ってことでしょう。
A ばあーか。かってに片思いしてろっての。

ー でもねえ、それぞれ身に覚えがあるからのお腹立ちかと…。
B ま、そんなところですか。懐かしくも辛気くさいモノです、恋ってのは。
A ばあーか。
B そうバカバカ言いなさんな、あんた自身が身に覚えのあることなんしょうが!?

A ………(声なく、口元のみが「ばあーか」)。
  (対談おわり)

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院風邪をひいたみたいなので、しばしブログ休憩します。みなさんありがとう。2011.11.28
(↑これがブログ中断緊急入院の始まりになろうとは…=後日記。虫人)

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「小さな喫茶店」の詩/6
A poem at ”A little cafe" No6.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustration by Mushid N.


炊事
The working with water.
佐奇森 幻
by Gen SAKIMORI


 寒い日でも

 君の手は水の中

 水道の水は賑やかだ

 小さな喫茶店のお昼時が近づく

 君の手が赤くなっている

 できれば僕の手で暖めてやりたい

 そして僕も

 心を温めてほしい

 お客さんが現れ 僕も黙って席を立つ


[読後感想対談] 
出席者:司会者、女性A、男性B

ー 詩は掲載したのにspaceTAKIの、つまりこのブログの主が突然入院したので「対談」が流れて今日になりました。
B お気の毒に。歳のせいで治りが遅いとか聞きました。よろしくお伝えください。
A そんなじじいの事より、詩の感想を…。

B そうでしたね、今度の詩で喫茶店の規模を知った思いです。炊事場が客から見えるていど。
A この人、午前中からお昼まで入りびたってんのかしら。それでこうなんだから、スケベじゃないの?
B 違う。これはあくまで心の描写、黙って立つんだから、逆。純なんですよ。

A だんまりスケベだ。いやらしい。
B あのね、単身赴任の夜間勤務てこともあるでしょう。「心を温めてほしい」からそこまで読み取れる。知り合いもいない他国でたぶん独身寮から会社へピストン生活。それだからこそ生まれた詩集と思いますよ。

A 生活はそうでも、性格がよくない。陰気のひと言。だからスケベになるのっ。思うこと有ったら言えばいいじゃん。それをシコシコ活字なんかにするからいやらしくなるんじゃない!
B いやらしくなんかありません!純です。

ー まあまあ、おさえて。おっしゃりたいことは分かりました。ごもっともです。
AB  (無言のまま対談終了)

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