僕は本厄
本年、僕は本厄である。
先日請け負った、歌手の伴奏の仕事。
現場で音響を担当した人物と、終演後に激論し、あまり気持ちの良い終わりでなくなってしまった。
そのリハーサル時、音響機材のセッティングがスムーズに進まず、時間がかかった。
音が出なかったり、また反対にハウリングを起こしたり、トラブルが相次いだ。
担当者曰く、「いつもやっているのだが、おかしい。」との事。
僕は静観しつつも、生音で演奏する案や、配線方法の確認、提案などをした。
ひとまず妥協点を見つけ、本番はトラブルも起こらず、滞りなく終了した。
終えて、現場が飲食店だったため軽食を取りながら「反省会(僕自身は通例しない)」が行われた。
議題は当然、今回の音響トラブル。
担当者とやりとりをする中で、僕は音響のプロ担に依頼しては、という提案をした。
ほとんどの催しでは、各部門のプロが場を受け持つからだ。
「費用が無い。」との返答を貰い、またすかさず提案。
僕が得るギャランティーの一部を音響に回し、低予算でも依頼を受けてくれる人を探す。
若しくは、大きい場所でない限り、生音で演奏するのが、機材トラブルも招かずスムーズだ。
そもそも本番になれば、機材云々を演者が扱う事は出来ない。
兎も角も、ヒートアップした議論、最終的には、相手の「黙らんと殴っつけるぞ!」
という半恫喝のようなセリフを喰らい、僕は完全に気持ちが離れ、ジ・エンドだ。
日常では平穏な僕だが、音楽の現場となれば話は別であり、折れる事は難しい相談だった。
さて、先日あるイベントで再会した同級生(ベース奏者)は一足先に本厄を脱した。
彼曰く、普段なら回避可能であろうトラブルが、見事にヒットするらしい。
それにより、級友は精神に堪えたそうだ。
そう言われると、前述の人間関係然り、思い当たる事もすでに多い。
2019年に入ってすぐ、僕は愛車の自転車で鉄柱に激突、転倒した。
細々とした出来事が色々起こるのだ。
ちょうど読み終えた、川端康成「山の音」を思い出す。
最後の厄年を迎えた一家の主が、ふとした事から凶兆を予感する。
大ごとは起こらないのだが、彫りの深い人物描写が大変素晴らしい一作だった。
そんな事を考えると、永遠に続く縁などなく、一期一会の毎日が過ぎていくのだと気付かされる。
災い転じて、、ではないが、改めて本当に大切なもの、やりたい事を見つめ直す年になりそうだ。
苦難は逆にチャンスになるのだろう。
小説は素晴らしいが、実(じつ)がやはり面白い。
他人の作品も聴くが、自分の音を見つけたい。
精神は強くないはずの僕だが、思いのほか回復が早いらしい。
今年一年、じっくり自分と向き合って過ごしてみたい。
【垣田 堂 オフィシャル・サイト】
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【ラジオ】「ギタリスト 垣田 堂のカキタイムズ」エフエムとなみ(76.9MHz)にて
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■本放送:毎月第1、3火曜日10:30
□再放送:同週水曜日13:30、木曜日19:00
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1978年、アメリカ・ニュージャージー州生。金沢市在住。
ニューヨーク、スペイン・バルセロナでの演奏活動を経て、現在は北陸を拠点にする。