小さな喫茶店の詩 11「たばこ」
A poem at ”A little cafe" No11.
(名古屋滞在時に5冊ほど作った詩集中の一部です)
Illustration by Mushid N.
The smoking.
by Gen SAKIMORI
小さな喫茶店に入り
腰をかけると すぐたばこを口にする
ほかではあまり吸わないのだけど
煙突みたいに 僕の口から煙がモクモク
よく 話の間合いにたばこが便利と言うけれど
君に話しかける勇気がなくて
ただ ただ たばこを吸ってるのは
多分 もう一人の僕と話しているからなのか
できるなら
君との会話で ゆっくりたばこを吸ってみたい
出席者:司会者、女性A、男性B
− 久し振りにお集り頂き、ありがとうございます。
A 館主が退院されたそうそうですね。
− あのご仁はまだ半病人ですね。同じ場所を2度切るとやたら痛いとか。でも死んだ方が楽なんて思うのを前に2回やってるから、今度はぜんぜん楽でさっさと出て来た。で、今は時々お腹が痛むらしい。
B 大丈夫なんですか。
− 時間の問題。早く出たって、ほら、人間みな同じように出来てるわけで、特別ってのじゃない。
B そう、自分は特別すごいんだも、他と比べてだめなんだも、両方がコンプレックスと呼ばれる。人間はみな同じなんだから共感もできるわけで…。
A あら、そうかしら。わたし今日の詩、全然共感しないわ。
B たばこ喫わん人には解らんかもねえ…。
A 語るにおちるだわ。人間みな同じって事はないの。違うの。それでこそ皆、価値がある。違う?患者もいれば医師もいる、看護師もいれば掃除のおばさんもいる。自分は自分、みな自信持って生きていって欲しいの。
B そりゃそうです。最近の若者、就職出来ず自信喪失する人がおおくて気の毒。運良く懸かっても、夜半までこき使われるのですぐ辞める。日本人はどうしたら自信をもてるんだろうか。
− 国の形を一から仕切り直す時が来てると思いますね。
A わたしもそう思うわ。とりあえずは今のままにして、そのうち変えてこうって姿勢はだめ。時間がないでしょう。もしそうしたいんなら、どの道今まで通りは無理なので、今日からの国造りはこんなんにしましょうというヴィジョンが欲しい。つまり若い人が夢を持てて、年寄りが応援するそんな日本に構造を変えなきゃあ。
B 民主に期待したんだけどなあ…。官僚は昔は優秀といわれてたんだけど、今は保身しか考えない人が多いんだねえ。高度成長期、金が全ての国になってそれが身について、いつのまにやらだらだら借金国。
− あのう、詩の方は…?
A それが感想。たばこはもう時代おくれで小道具としての力は無いけど、だからこそ時の流れとか、否応なく追い詰められいく個々人の立場とかを連想するし、今の時代へと深読みもできる。これも文芸の力ってもんよ。
− ?
B ま、そんなところで、お開きにしましょうか?
(司会、煙にまかれて役うばわれての終了) (対談おわり)
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