デッサン3「鳥の記憶」
芸術家がインスピレーションを得るため幻覚剤など危険な薬を使用して問題になる事がままある。かつてはオートマチズム(automatism)という描画様式が試みられた。わざともうろうとした情態で描く。
美術批評家、学者、詩人として多くの美術家から評価の高かった滝口修造(Suzou TAKIGUTI)の回顧展には彼自身が制作したデカルコマニー(decalcomania=精神分析で使う左右対称の圧着転写画)が展示されていた。これらは、精神的な深み、本質的な表現や学究的な真実にかかわりたいという純粋な指向性から行われたといえる。
私は、病気や老齢化や精神的な落ち込みなども、描き出すイメージに決定的な影響を及ぼすだろうと想像していた。そんな追いつめられた状況では、潜在的な何ものかが顕在化するに違いないと思っていた。事実、手術で入院中の私の絵は激しい肉体的な締め付け感が画面にもろ反映した。他の絵などとても描けない強い表現上の誘導に完全に支配されながら描いた。その前後には鳥の化け物や龍(bird-monster or doragon)に似た怪物らしきものもある。
手術後15ヶ月。体重や体力は昔に戻っていないが、血の巡りの良さには実感がある。今のような健康?な自分にもどってしまうと、私は何を表現したくなるのだろうか、と自分自身に興味があった。
結果は出た。久しぶりにデッサンしてみたが、上の絵である。ドラゴンはたぶん人類、特に男性の集団記憶(集合的無意識=collective unconscious)と関係があるように思う。このブログの「お気に入りブログ」に川埜龍三(Ryuzou KAWANO)さんという健康そうな倉敷のアーティスとをあげさせてもらったが、何と似たイメージの造形があることか。
ドラゴン(doragon)は中国産の龍や、単なる動物の部分を集めた想像動物以上の深みのある存在として人類が何処かで共有している原初的イメージの一つまたは何か性的なシャドーにちがいないと思う。せめて暫くは意識的にでもこれを洗練してみたく思っている。虫人
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