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ひろのひとみの世歌意3=メトロノーム

[ぴあのうたいの詩]

メトロノーム
ひろのひとみ

  
 狂うことのない  永遠に  
 だけど 止まることはある  
 ゼンマイが 切れた時

   人生は長くて  人生は 曲がりくねって
   だけど道は 前にもあって  横にも  後ろにも  ある

 変わることはない  永遠に
   だけど 黙ることは ある   
 ネジが切れた時

   一日は長くて  一日はうねり狂ってて
   だけど後ろにも 戻らない  横にも  斜めにも  戻らない


  メトロノームのように 正しく刻む 時間
  だけど かすかな 狂いが 微妙に ずれて いく
  メトロノームのように 正しく刻む 時間
  だけど かすかな 狂いが 

  微妙に・・・

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[読後感想対談]
司会者、女性A、男性B

− 春めいてはまた雪、足元の悪い中お集まり頂いてありがとうございます。ひろのさんの歌詞、二つ目ですが読後感想をお願いします。

A 予めメモを頂いて読んでみましたが、この詩を選んだ理由がしりたいの。
− はい。まずは分かりやすさです、司会者の独断ですけど。一見どの詩も平易に見えるんですが、奥が深くてというか、重いんで。

B なるほど。この詩もメトロノームだ、音楽だ、なんてたかをくくってると足元ををすくわれ、罠に落とされそう。ひろのさんの歌詞は”怖い”ですよねえ。彼女は日常の中に隠れた本質をさらけ出して、みなさんが見ないようにしているつもりのモノを突きつけて来る。ご本人がごく普通の女性で、やさしく繊細だが穏やかな方とお聞きしてますので、よけいに堪えるわけです。

A メトロノームは、ひろのさんにとって子供の頃から身近にある平凡な玩具みたいなもんでしょう?だから安全、とも言えなくて、詩作を迫る刃物になる。この感性の鋭さは私なんかにはまねできないものがあって、ほんとに詩人だなあと思います。

B ご存知、中野重治と言う方がいました。プロレタリア詩人で秀才で、戦前戦後に官憲から弾圧を受け、戦後は参院議員にもなった文筆家。比較のつもりはないのだけれども、ついこんな話を思い出します。

みんな故人ですが…小野忠弘さんという現代美術の草分けの国際作家が福井県の三国にいたんですけど、福井出身なので、中野さんが彼を訪ねたところ、言い争いになって「お前のような俗物に俺の詩が分かってたまるかっ!」と中野さんが灰皿を投げつけたと言うんです。

A すごい話!…で、小野忠弘さんて何者なの?
B 戦後早い時期に当時の前衛的な作品で国際展で受賞した現代美術の実力者で、のち福井大学で教えた。気鋭の新進評論家だった針生一郎などを「針生くん」などと軽く呼んでたくらい…。
あ、そうか、針生氏が福井の金津美術館の館長をやる気になったのは中野重治の出身地そばで特別な思いが有ったからかも知れないなあ…。
A 「新日本文学」つながりってことね。小野さんも関係あったの?

B 無いと思う。彼は福井県の「北美」という美術運動とも距離を置いて「哲学派」なんて自称してた。NHKのドキュメントで見ましたが、晩年はジャンクアート作家でした。ジャンクアートは鉄屑など廃物を使った彫刻のようなものです。

ピカソも一時共産党員にされていた事もあったし、針生氏も"アヴァンギャルド"以前はシンパでしょう…ところが前衛美術(アヴァンギャルド)と政治イデオロギーというのは似て非というか、その辺りが許せなかったのだと思います、中野重治は…。

A 詩人の魂の純真さからは前衛美術家は俗物に見えたわけね。「アヴァンギャルド」ってもともとは社会革命の前衛から来てるんでしょう?
B ええ。"近代美術の革命”の「前衛」…だなんて、そもそも"俗物"だけど…。
A え!そうなの?(笑い)

B いえ、立場の違いという話。あ、ひろのさんね、この方のすごいのは、心の根っ子や命の有り様を、直に作品化してしまう立場、その直感的な純粋さです。無意識から出て来るので怖くもあるけど心に響きます。

こうしてる間にもメトロノームは時を刻み、そしてゼンマイはいつかは止まるか壊れるんですよねえ。微妙に狂うって…すごいですよねこの感覚…ほんと、まねてできるものではありません。
− ありがとうございました。(了)

ひろのひとみのぴあのうたい/CD
初のCD(¥1,800.-)発売、ご注文先:

hide113@asagaotv.ne.jp
※著作権者:ひろのひとみ。連絡先は上記。


スペース滝
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by spaceTAKI | 2014-03-08 13:13 |  ひろのひとみの世歌意 | Comments(0)