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スポコン君36

[田中雅紀氏の連載マンガ] 
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「美味しんぼ」の鼻血 


「美味しんぼ」の鼻血が問題になっている。「美味しんぼ」はビッグコミックスピリッツ(小学館)に連載中の人気漫画。いつもは料理をテーマにしているが、今回は福島県の原発事故後の今をドキュメント風に描いている。
作品の中では前双葉町町長が実名で登場し「事故後ひどい疲労感で苦しむ人や、鼻血が出る人が多勢いる」と発言したり、取材に回る主人公が鼻血を出す場面があったりする。

これが風評被害につながると福島県が抗議し、専門家も「低い放射線被爆で鼻血が出ることはない」と言い、政府すじも「科学的根拠のない一方的表現は問題だ」と批判。
漫画の原作者の雁屋哲氏は「取材して真実を書いたのに、なぜ攻められるのか分からない」と反論。スピリッツの編集部は「鼻血が原発事故のせいとは断言してない」と言い訳。

また雁屋哲氏は「書いた内容についての責任は全て私にあるので、編集部に抗議するのはお門違い」と言っているが、これは違うと思う。もちろん作者に責任はあるが、作品の全責任は最終チェックをする編集部にあるのでは。
40年ほども昔のこと、スピリッツの兄弟誌ビッグコミックオリジナルでやはり大きな失敗をしている。連載中の作品で重大な人権侵害を犯し、発売した雑誌を全部回収したのだ。当時私はビッグコミックやオリジナルで仕事をさせてもらっていたので、詳しい事を見聞きしているが、ここでは省略。

私は読売新聞の金沢版に30年以上前から「漫画週評」という1コマ漫画を描いているが、その間に何度かは編集部のチェックで原稿がボツになっている。たとえば昨年の大雨のあった週の作品。

大雨の中に車が1台いて、車の外に幼い子供が裸で2人「わーっ シャワーみたい!!」と喜んでいる内容。このままでは大雨の被害を心配している人に悪いと考え、車の中のパパとママに「被害が出ないといいね」と言わせてフォローしたつもりだったが、編集部は、やはりマズイと決めてボツにした。私は反論せず受け入れた。私はこれまでの経験から編集部の見識を信じているからだ。漫画家は(私は)笑いをとろうと、ついムリをしがち。そのため自分の作品で誰かを傷つけたり。嫌な思いをさせることを恐れている。だからしっかりチェックしてくれる人がいることは、ありがたいのだ。

今回の問題がどうして作品発表前にスピリッツ編集部で話し合われ、起きる結果を想像できなかったのか不思議。もしかしたら、作者も編集者も原発反対という考えが初めからあって、ある種の先入観から取材をし、作品を書いたのではないか。これは私の個人的感想であります。
( 田中雅紀 )
by spaceTAKI | 2014-05-15 11:45 |  スポコン君(花丸ゆう) | Comments(0)