”天使”が結婚 

”天使”ステファニーの結婚 

ステファニィー・トリック、に思う
Stephanie Trick

5月8日
 つぶやきます。個人的な感想なので、お聞き流しのほどを。

 私はピアノが少し弾けますけど好きなだけの素人で、まともな曲は一つも弾けません。中学時代に教師から基礎と楽典知識は習いました。ビートルズがレコードデビューする5年も前のことで、アメリカでは私と3歳ほど年上でカナダ出身のポール・アンカの「ダイアナ」がヒットしたころです。後の「黒い花びら」も私の心をとらえた曲ですが、いずれも構成コンセプトが単純明瞭で、言いたいことがはっきり伝わる曲。前者は低音から高音へと徐々に感情を盛り上げていき終焉、後者はピアノの三連音符に乗せた短調の曲で、やはり下から昇って絶叫して落とす。非常に分かりやすい。これはクラシックの音楽理論にも合致する基本的な構成でしょうね。

 ところで、純なアメリカン・スタイルというのはこれとはどこかが基本的に違う。西部劇のバック音楽やラグタイムは大好きで気になってたけれど、音楽的仕組みが分からず未練が残ったままでした。ジャズピアノを教えるピアノ教室なんかありませんでしたから。今はネット動画で親切に教えてる。そこで、この年齢になってアメリカン・クラシックスタイルにはまり一月以上たちました。簡単に身に付かないけど、充実感があってとても楽しい。
 
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 中でもスティファニー(Stephanie Trick)という若い女性の演奏がいいです。速く弾く、上手く弾くなど別の魅力あるベテランも当然いるのですが、彼女の演奏は美しい。インタビュー画像では、幼い頃からクラシックピアノをやって後転向したらしい。初期、10年近い前の動画演奏ではゆとりの無い真剣な表情で、弾き終えての拍手に応える笑顔が童顔で私も嬉しくなるのですが、演奏内容からは原曲の持つ狙い以上に洗練された品を感じます。彼女の感性が自然にそうさせるのでしょう。
 
 ネットのコメントでは「(音楽)天使だ!」「幸せです。ありがとう!」と書いてるものもあって、CDの売り場の案内をし少女らしいはにかみで笑いを誘うあたり、スペース滝に出入りする若者たち(この夏は『灰かぶりworks』=シンデレラと名づけた展覧会を行う予定)と同じラインに居る感じの若い女性の一人です。「古い音楽だ」「しゃべりすぎ」と批判的に書いたものもありますが、TVショーに出たあたりから、彼女は成功者になったのでしょう。有名先達との共演も増え、演奏舞台がテント内からホールへと時間経過するのもyoutubeで分かります。イタリア人ピアニストと最近結婚したので「彼女を射止めた彼は幸せなやつだ」というのもあります。才能があれば、ネット社会は放っておかない、それが現代だと思います。
 

 日本のお茶の間TVでは、卓球の”泣き虫・愛ちゃん”がオリンピックから結婚までのシーンを家族同様の間近さで心惹きつけましたけれど、スティファニーはネット時代の音楽”愛ちゃん”の成功姿に重なります。「成功」とはどうなることか?という問いは残りますが、彼女は今様の”シンデレラ物語”とみられているらしいコメントも読み取れます。
 
 長かった髪を切り、化粧し、スパンコールをキラキラさせたドレスアップですっかり大人になったステファニーは、音楽もまた変わりました。アメリカン英語の持つストレス・アクセントそのままがピアノに乗り移ったようなテンポを軸に、ピアノ音の目新しい弾き方を”開拓”することに腐心して来た彼の国の伝統ピアノ曲が、彼女の結婚で、すっかりイタリアン・クラシック・ピアノ風と合体し、別の何かになりました。
 
ともあれ夫と二人で大ホールの大きな拍手に迎えられた今のスティファニーはきっと幸せに違いありません。異なる文明がぶつかる時、新しい文化が創造されるといいます。「彼女の演奏は結婚でスケールアッップした」というコメントもあります。そうなのかも知れませんしそうあるべきとは思いますが、私は昔の彼女が好きなのです。ピュアーな魂が鍵盤と一体になった切れのいい繊細さは、当時のアメリカン・ピアノスタイルとぴったりで、しかもその音楽性を彼女流に洗練させたと思います。
 
ヨーロッパはアメリカにない伝統の重さを背負っていて今日の音楽の基礎的部分を担っているけれど、それはまた時の流れにさからうベクトルとして負の働きもします。若い人たちにとって伝統の押しつけはうっとうしい。かといって若さは粗あらしさを伴うのが常で、変革のエネルギーがどこでも賞賛をもって迎えられる訳ではありません。その点、ステファニーは古いアメリカンスタイルを若い感性で蘇らせただけの再現者に過ぎず、何も新しくなかったかもしれませんが、新しい何かを吹き込んだように新鮮に感ずるのは確かだし、不思議な所でしょう。
 

 しかし、夫とともにやろうとしている現在のスタイルが真に現代人の心を捉えるものかは私には疑問です。 夫・Alderighiのらしい編曲と共演スタイルにはあまり新鮮味を感じません。一種の安定感と完成されたセンスはありましょうが、生き生きした躍動感が伝わってきません。だからどうなの?という感想。
 昔のステファニーに期待していたものを失なって私は寂しいけれど、今も削除されずに過去の演奏が公開されているのは「ありがとう!」です。同様の事情は、造形美術の世界、なかんずく日本のような伝統ある土壌でも起きがちでしょうが、現代を生きる生き生きした若々しい感性とピュアーな心だけは老いても持ち続けたいと思いますね。 中田むしんど
興味あればコピペでどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=NilIxoszh5M
https://www.youtube.com/watch?v=M07I6G29ZuM

スペース滝
925-0005 石県羽咋市滝町レ99-88 TEL&FAX 0767-23-4401
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by spaceTAKI | 2018-05-09 09:28 | ■音楽・舞台など | Comments(0)