あらためて、海進と海退
6000年前のカイシン
縄文時代の海面上昇は気温の上昇が原因ですが、正比例しているともいえないようです。世界最古の漆塗り櫛が出た三引遺跡の話に入る前に、縄文海進(海岸線が内陸深くに入る)を調べましたので、報告したく思います。
グラフ年表の下段、BC6000年挟む400年の間続いた「ローレンタイド氷床崩壊によるミニアイスエイジ」は温暖化期の象徴的できごとでした。北極にあった、高さ数千メートルの氷の大氷層(=氷床)が、洪水となって北アメリカ大陸を下り、メキシコ湾に注いだというのです。温暖化時代というのに小氷期(ミニアイスエイジ)を生じました。
気温が下がり、海水が移動した方の海の底が沈み、地球内部のマグマだまりで圧力が方向転換、遠い対岸の陸地を押し上げたという、まことにスケールの大きな玉突き現象が起きたのです。
なので陸地がせり上がったところでは海進が起きず、「海退」つまり逆に海岸が遠ざかってしまった。かような地震があって、温暖化期とはいえ世界中の海で海進があったのではないのです。
グラフ下段、青点線の東京葛飾と、ピンク線=北陸・日本海の海面高の差はこれかもしれません。関東の地下は三つのプレートがぶつかりあう地震の巣域です。
葛飾の縄文海進グラフが+3mの台形なのは、本来は+5mhの頂点を持つカーブを示すべきところ、ゆっくりした地盤隆起(最大2m)をした分だけ海面が下がってるのでしょう。
グラフには気温の変化も重ねました。この黄色線のジグザグの大まかに平均値をとったうねり(値)が、長いタイムラグ(時間の遅れ)をおいて、ほぼ海面高変化として現れているのが分かります。
大自然の時の流れとは、とんでもないゆっくりなんだなあ、と改めて見入ってしまいます。このスケールでは確かに気温と海進・海退が比例しています。
年表部分に赤丸を一個足しました。赤漆を繊維にからめて作ったひも状の腕輪の出土品が北海道に出ています。三引に先駆けること1800年、古いですねえ。遺跡から漆の木の枝が出てきた程度ですと福井県の鳥浜貝塚遺跡で確か1万2000年以上前だと記憶します。
ところで、子供の頃ウルシにかぶれたことを思い出しながら、写真を撮りに山に入ったのですが、ありませんでした。思い余って針山集落の陶芸家・坂田さんを訪ねて伺いましたが「見ませんねえ。聞きませんねえ」とのこと。近年の漆は輸入ものと聞きますから、マツタケ同様希少になったのかも。
ウルシとは別の木のニワウルシ(庭漆)の写真は撮りました。図鑑では葉の印象がやや違う。今思うと、子供の頃ウルシと言っていた真っ赤な紅葉のはこちらの方かもしれません。造園家の筧さんに聞いてみたいです。 (つづく) 中田むしんど
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