クチャは脚力で生まれる

M.IREI (沖縄県)
義信さん(故・伊禮義信)が穴窯で目指していたやちむんは、クチャ南蛮焼きです。
クチャとは、沖縄南部に多く見られる灰色の土です。長年沖縄の海で堆積していた海泥で、耐火度は1,100度程度と、焼き物としては少し低めです。堅い泥という意味合いがあり、あまり焼き物の土として扱い易い土とはいえません。
彼は地元の原料にこだわり、高温で焼いた薪の灰被りではなく、焼締めの魅力をこの土で探求していました。
義信さんがあと一歩というところまで造っていた穴窯が、一度もやちむん(焼き物)を焼くことなく壊れてしまっては一大事と、やちむんやの友人と話し合いを重ね、穴窯による窯焚きを秋の頃に行うと決めました。本当に感謝の一言、“在り難し”です。

いよいよ窯焚きに向け、2021年春頃からやちむん作りがスタート!
クチャ主体の粘土を購入し、友人もその土でつくり始めました。
初めて私が工房の蹴ロクロを回した時、電動ロクロしか触ってこなかった私はとても驚かされました。
ロクロを脚で蹴って回すのですが、蹴る力によって「回転の速度が変わる~?」私には驚愕の事態です。
クチャは陶土としては粘りや腰もない上に、私のロクロを蹴る力が弱く、ロクロを安定して回転させることができないのです。脚がもたず、土はへたって当然形を為し得ません。
脚力の弱い私では、土ごろし(土の空気抜き)どころではなく、土に力を加えようものなら、ロクロが止まる、止まる、止まる・・・
無残にグニャリとひしゃげた土の塊に、「あきさみよー」(なんじゃこりゃ~)と何度つぶやいたことか。

そういえば義信さんの脚は、筋肉が引き締まっていてとても力強く、私は惚れ惚れしていました。
彼にその理由を問うと、はにかみぶっきらぼうに、「自転車に乗っていたから」と。
確かに、彼は高校を卒業した後、自転車で日本縦断をしています。
そのおかげで焼き物と出会い、愛知県や石川県での修行、さらに多くの友人に恵まれ、石川県の文化に触れることができました。
沖縄に戻ってからも彼は自転車を愛好し、25年程自転車に乗っていたようです。
また長年にわたって自彊術、太極拳、錬功と日々自分のペースで、東洋の感覚・静かな動きを楽しんでいました。
今なら分かります。
義信さんの脚力、日々引いていた蹴ロクロから得たものも大きかったはず! (M.伊禮)

