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伊禮義信・瞑想や心のリセットような時間

🌺「やちむんや」沖縄から
 地元素材にこだわった故・伊禮義信氏の工房で、見えたこと、感じたこと考えたことを書いています。


やちむんの道具『シジリ』

M.IREI (沖縄県)  

 驚いたことに、義信さんの工房には土練機(土を練る機械)も、電動ロクロもありません。
蹴ロクロと、手製の木ベラ、石臼、初めてお目にかかった写真の擂り鉢、ポットミル(釉薬等の原料を混ぜ細かくすり潰す機械)があるのみです。
その為、工房は静かで、鳥や虫の鳴き声がよく響きます。

私にとってこの見たこともないすり潰す道具は、重くて磨り棒すら持つのがやっとという代物です。正直、この道具が工房にあること自体不思議でした。
「これは何?古い道具への郷愁で集めたもの?」
移動すらままならないこの道具、まさか、これを義信さんが使っているとは夢にも思いませんでした。

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ところが、義信さんの制作ノートを紐解いてみると、釉薬作り、土作りの文章の中に出るは出るわ、「すり潰す」という言葉が。
原料の灰炭や、畑から拾い集めたであろうマンガンノジュール(マンガンの粒)を細かくする際もこの擂り鉢が活躍したのでしょうか?
今回使用するクチャ(粘土)も義信さんは原土を購入し、あまりの浸水の悪さに大まかに砕いていたようですが・・・。疑問だらけの日々でした。
長い間私は、この擂り鉢の名前もわからず、本来やちむん作りの為の道具であるということにも気づいていませんでした。
ある日、義信さんの蔵書の中から、沖縄のやちむんのバイブルともいえる貴重な本の中に、この擂り鉢の写真と、『シジリ』という名前であること、やちむんの原料作りに用いる昔からの大切な道具であるという一文を見つけたのです。

また一つ、義信さんの謎解きができた気がして私は嬉しく思いました。

彼らしいな、と。

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きっと彼には、私が想像するような、「大変だ」という気持ちはなかったのでしょう。
鳥の鳴き声を聞きながら無心に「ゴリゴリ・・・」と材料をすり潰す静かな時間。
予定や何かに追われることなく、自分の夢に向かって、好きなことを自分のペースで行っていた、自由で大切な時間
自分自身が納得するための丁寧な “手仕事”
穏やかで、まるで瞑想や心のリセットでもしているかのような。 (M.伊禮)

スペース滝 925-0005 石県羽咋市滝町レ99-88