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贋物を買う 

2026年3月15日(日)
中田虫人 Mushind N.

絵を描いています


10日ほど前、贋物を承知で"北斎"の肉筆画を買いました。
買った所は隣県の古道具屋さん。一目見て北斎系の画風掛け軸と分かりましたが、北斎の訳がありません。で、落款の号を改めますと「州や無」という字に似てるのでネット検索で調べました。で北斎と書かれていると判ったので、明らかな贋物=贋作と判明しました。
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さて、なら、買うべきか否か。
 実際3度店に通い、ついに買いました。よく出来ているので手元に置いて色々勉強したかったからです。

 このところ私は絵を描いております。税務対策がらみで売れる作品を書かなきゃ、という不純な動機からでしたが、やり始めると当然芸術家魂がそれを凌駕します。なぜ人は描くのか。描くとは何なのか。見るとはどういうことか、です。
で、気になる作品に出会うとつい買ってしまい、初めはエッシャーの騙し絵画集、次に「錯覚」の延長上にあるデズニーのミッキマウス立体画像でした。透明な凹凸樹脂膜をすかしてみると写真が立体に見える仕組みはどうなっているか、です。日本のお札にも立体画像が印刷されている時代です。

が、そこからはもっと本質的なものが見えてきます。見たものを描くという具象画を描くこと自体が3次元という現実を2次元に置き換えるという”錯覚的知覚”を望む行為だからです。
東京大学では、現実とは二次元をフォログラフィックのように三次元として存在するもの、という見解がなされているとネット情報は伝えます。量子力学が提示したのは、確固とした現実=リアリティーの不確実性です。我々の認識世界は、4つの力というエネルギーを脳がシュミレーションしているに過ぎないのではないのかと言うわけです。

偽北斎は誰か?


 私の描いた絵の話は次回に回すことにして、話を戻します。
写真の”北斎”は誰の手になるものかを調べました。二代・戴斗(初代は北斎)だろうと推測しました。北斎の弟子で大坂北斎、犬北斎と揶揄された贋作者です。もと狩野派に習ったこともある最も優秀な弟子だったといいますので、掛け軸のボタンの花の硬い表現は妥当。北斎のボタンはもっと柔らかくしっとり描かれます。明治期に飯島虚心という人が『葛飾北斎伝』を著していて、彼は”大阪北斎”を見て「画および印面は、真の北斎なれども、落款の文字異なれり」と書いています。
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 本物と比べてこの落款の印文字は同じですが、直線的で明らかに違います。「かつしか」と変体仮名で銘がありますが、版画作品に似た表記があれど「志」は「し」ですし、字体もそれらしくありません。結論、大阪北斎かと推測します。

が他に、私の推測を否定する所があり心が揺れます。目に瞳孔が描かれていることです。明治まで活躍の国貞の役者絵に見栄を切った目に瞳孔らしきが描かれていることもあるのですが、ここではより新しい感じで後の世の日本画の表現ではないでしようか。
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実は昭和9年に肉筆浮世絵の偽造大事件があるのです:
春峯庵事件は、1934年に起こった肉筆浮世絵の大規模な偽造事件。 1934年、東京美術倶楽部で春峯庵なる旧家の所蔵品という触れ込みで東洲斎写楽、喜多川歌麿などの肉筆浮世絵の入札会が開かれた。「世紀の発見」という新聞報道もあり、注目を集めたが、やがて全てが贋作であることが発覚した。」Wikipeda
事件では北斎もあり、画目録で確認しましたが雰囲気が違う作品でした。ただ、図録外のものは裁判の刑確定後に某関係者に全て下げ渡され行方不明なので、この掛け軸が中の1本(幅)ということもあり?かも。ともあれ人間の認識感覚がかように不確実ゆえにこそ芸術が存在し得ると言えるかもしれません。
スペース滝